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いつ地雷を踏むかわからない槙さんの反応を伺う。スッと目線を下に下げたかと思えば、聞こえるかわからないくらいの声で
「……そんな風に映ってんのか……」
「ん?」
「……残念だけど、違うな。俺は、今、恋愛なんかしてる暇なんかねーの。仕事だけで手いっぱい」
明日の仕込みだろうか。
器用に馬鈴薯の皮を繋げて剥いていく。
その繋がっている皮をじっと眺めながら、これ以上踏み込めない何かを感じた。
「……ごめん、遅くなって」
化粧室から戻ってきた美憂が、財布から五千円札をテーブルの上にそっと置く。
「……詩花、ごめん、先に帰るね。急用出来ちゃって…」
「え、じゃあ私もーー」
私の言葉なんて耳に届いてないみたいに、目線も合わせず足早に入り口へと足を進める。
「美憂」
槙さんの声に、ビクっと肩を揺らした……気がした。その声に振り向くことも、返事をすることもしない。
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