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「……ハル」
首に回った腕が解けたと同時に、くるっと反転させられて、そっと唇が重なる。
触れるだけのキスに物足りなさを感じて、ハルのシャツをキュッと握りしめる。
すると、ふっ……と離れていくハルの顔。
いつもなら、深さを増すキスをくれるはずなのに……。不安そうな顔で、ハルを見つめる私に
「スープ、温まってるぞ」
え?と思いながらお鍋を覗くと、まるでマグマのようにブクブクと煮えたぎっている。火にかけていることをすっかり忘れるほど、いつの間にかハルのキスに酔いしれていた。
「先にご飯、食べるか」
クスクスと笑いながら、帽子と伊達眼鏡を外して、リビングへと戻っていった。
ーーー***
「いただきます」
テーブルを挟んで、向かい合って座る。
所狭しと並んだ料理を嬉しそうに眺めながら、ハンバーグに箸をつける。
口に運んでいく様を、じーっと眺めていると
「……しい、見過ぎ。食べづれーよ」
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