奏×リカ

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その当時、リカは大学に入学したばかり。 実家を出て一人暮らしをしていた。 そのため、顔を合わすのは週に一回、リカが実家に帰ってきた時だけ。 「あ、奏くん、おかえり。ご飯出来てるよ!」 「……ども」 距離なんか縮まるわけがない。 姉貴だなんて思えるわけがない。 姉弟になった実感さえないんだから、どう接すればいいのかなんかわからなかった。 けれど、俺はこの距離感でいいと思っていた。 それが変わり始めたのは、俺が高校三年になったばかりの春。 「あら?おかしいわね……」 「どうかしたのか?」 義母さんが電話を握りしめたまま、首を傾げている。 ダイニングテーブルで夕食を食べていた父さんは、不思議な顔で義母さんを見た。 「リカが電話にでないのよ」
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