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玄関を出る間際に父さんから「無茶だけはするなよ」とだけ釘を刺されて、俺はリカのアパートへ向かった。
チャリを漕ぐスピードは増していく。
父さんと義母さんの前では冷静でいたけど、一番焦っているのは間違いなく俺。
ドクドクと嫌な胸の高鳴りが止まってくれない。
リカのアパートが遠くに見え始めた。
外から見て、リカの部屋は二階の左端。
電気は点いていなかった。
チャリを入口に雑に停めると、急いで階段を駆け上がる。
リカの部屋のインターフォンを鳴らしてみても、応答はない。
「リカ!?」
ドンドンと部屋のドアも叩いてみるけど、こっちも反応はない。俺は急いで義母さんから預かった合鍵を、鍵穴に差し込んだ時だった。
カチャンーーと鍵が開く音。
ゆっくりとドアが開くと、リカが少しだけ顔を覗かせた。
「………奏、くん?」
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