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ーーーハルside 携帯のアラームで目を覚ます。 時間を確認すると、八時半を過ぎたところだった。 隣を向けば、スースー…と規則正しいリズムを刻みながら、眠る彼女の姿。 寝顔を眺めているだけで、笑みが零れる。 このままずっと離したくはないけれど、仕事の時間も迫っている。隣の彼女を起こさないよう、そっとベッドを後にした。 キッチンに立って、詩花の好きなオムレツを作る。いつも詩花が俺のために作ってくれる料理を、今日は俺が詩花のために作る。それだけなのに、わくわくするのは何故だろう。 「……ヤバイな……俺…」 ポツリと呟いた独り言が、フライパンから奏でる音に掻き消された。 けして上手いとはいえないけれど、詩花の笑顔を思い浮かべながら作ったオムレツをお皿に盛る。 ブー…ブー… 携帯のバイブ音に画面を覗くと、マネージャーと表示された着信。 ひとつ小さく息を吐いてから、電話をとる。 「……もしもし」 「ちゃんと起きてるわね。あと15分後にマンションの裏口にきて」 「……わかった」 まだ何か言っていたような気もしたけど、通話終了のボタンを押す。 時間が過ぎるのは、あっという間だ。 楽しい時間ほど、滑り落ちるかのように一瞬で消えていく。
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