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ーーーーー槙side
嬉しそうな顔をして店を出て行く。
その背中を目で追った後、誰にもわからないように、小さく溜息をついた。………のに、彼女にだけはお見通し。
「………気になるんでしょ」
俺の差し出したデザートを口に運びながら、ポツ…っと呟く。
「……別に」
俺もまた、何ともないような顔で返しながらも、心の中には小さな染みを広げる。
「相手は彼氏だと思うけど」
「言わなくても、わかってるよ」
考えないように、無心で仕事に打ち込む。
もうすぐ三十路を迎えるというのに、恋愛に関しては、どうもいつもの自分を保てない。
普段からあまり顔には出ないタイプだと思うし、この事に関しても絶対にバレない自信があった。
なのに、美憂には簡単に暴かれてしまう。
それだけ俺をよく見ている証拠。
そこに気持ちがあることには、全くといっていいほど気付いていなかったけど。
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