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ーーー美憂side
花火がよく見えるという、穴場スポットに着くなりすぐ、佑くんに手を引かれて何故か買い出し係にさせられる。
「…っ、ちょっと待って!」
「あっ!すいません!早かったっすよね!?」
手は繋がれたまま、後ろを振り向いて少し焦ったような表情を見せる。
「もういいから。それより、手離して」
こんなの傍から見れば、ただのカップルだ。
付き合っているわけでもないのに、手を繋ぐ理由なんてない。なのに、祐くんは
「嫌です。美憂さん、危なっかしいんで」
そう言って、手を離そうとせずに、歩道に並ぶ屋台へと足を向けた。
「美憂さん、焼きそばと広島焼、どっちが好きっすか?」
「……焼きそば」
手から伝わる体温に、何だか戸惑ってしまう。
けれど、どうにかして早くこの手を離さないと、このままあの場所に戻ることは出来ない。こんな姿、槙さんには絶対見られたくない。
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