月の一本簪

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―― 十六夜は キセルをゆっくり 吸いながら 馴染みの客に文を書いていた 突き出し【初見世、処女を初客に捧げること】が17歳で、もうすぐ18になろうとしていた。 瞬く間に 吉原の上位番付、 三番以内には常に名を連立させていた。 「姐さま、十六夜姐さま、お届け物でありんす!」 十六夜に仕えている二人禿、沙夜と可夜。その内の 沙夜から、 縦長の小さな豪華小箱を 受け取った 「簪(カンザシ)かい?どなたからの?」 「あい、女将さんから預かりましたが、いずれわかると」 十六夜は不思議に思いながらもそこまで気にとめず、 客から貰った小さな可愛らしい模様包みの和菓子を沙夜に手渡した。 「可夜と分けておあがり。」 沙夜は嬉しそうに 可夜の元へと 下に下がっていった。
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