月の一本簪

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凜が まだ口をもごもご 金平糖の甘さを楽しんでいたとき ふいに源氏が口を開く 「お前、足ぬけしようとしたか?そんなことしたら、どんな目に合うか、吉原(ここ)に売られてきたころから、いやってほど聞かされたろ?」 凜は思わず、残りの金平糖をゴクンと飲み込み ブンブンと首を横に振る 「足ぬけなんかしない!…逃げたら、おっとや、おっかに迷惑かかるもの。逃げないもん!!…でもああいうのやだ…」 凜は 月翔と客の時を思いだし 俯いた。 源氏は 察したかのように苦笑いしながら 「仕方ねぇよ。お前はもう、廓の養い児になっちまった…。はやく、出たいなら、身請けか、年期明けだな」 凜は 今まで我慢していたがたまらず 泣き出した まだ男と女の性を無理矢理見せつけられる苦痛と、 やがて花魁として生きるための未来が来ることを 否応なしに 避けられぬことを 改めて痛感して泣いた
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