12 プライド

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そして、 「いっこ借りだ、吾妻」 夏樹はサッと立ち上がると、すでに香菜には背中を向けている。 長島は、ちょっと呆れたような眼差しで、夏樹と、それからしゃがみ込んだままの香菜を交互に見て、それから、 「あちらさんと話をつけるのに、少々時間を食った。それは悪かったよ」 いきなり妙な謝罪をする。 そして自分の口から出た矛盾にも気がついていないと、ちょっと戸惑った様子で、数回まばたきを繰り返す。 「あいつらは、こっちの世界の住人だ次男くん。キミら一般人にどうこう出来る相手じゃない。だから――」 少しだけ優しくした視線で夏樹を見た。 「そんな顔をするんじゃないよ」 夏樹はこの時、どんな顔をしていたのだろう。 香菜には最後まで、その顔を見せることはなかった。
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