5 踏み倒し?

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「……違う、の。ごめん……」 そんな事情は到底、夏樹には言えるはずもなく、香菜は涙をこぼしながら首を振った。 「夏樹のせいじゃないの。ごめん」 すると夏樹は、 「俺のせいじゃないっていうのなら、早くその涙を止めてくれないかな」 思いがけない冷たいことを言う。 香菜が、 「……そんな無茶、言われても」 ひぃっく、としゃっくりをひとつすれば、 「俺、女の子を泣き止ますのなんて、抱いちゃうしか方法を知らないんだよね」 「!」 しゃっくりと一緒に涙も引っ込んだ。 同時に鼻水がズルッと垂れた。 もう、最悪だ。 慌ててハンカチを出してきて、乱暴に顔を拭えば、夏樹は、本気なのか冗談なのか、さっぱりわからない顔をしたまま、 「とにかく借金が原因なら、全部俺に任せて。香菜ちゃんの悪いようにはしないから」 そんな風に言った。
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