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夏樹は香菜の身体に覆いかぶさってくる。
そのまま動かないので、大怪我でもしたのかと、
「な、つき?」
香菜が声を振り絞れば、
「……大丈夫」
夏樹は少しだけ顔をあげて、香菜に表情を見せてくれた。
その顔はいつも通り、余裕に微笑んでいる。
香菜がホッとしたのもつかの間、夏樹はいきなり上を向き、
「吾妻っ! いるんだろう吾妻。助けろよ!」
オフィスビルに向かって大声をあげた。
すると、
「黙れ、こいつ」
再び、夏樹の背中に振りおろされる木刀。
「キャアッ!」
目の当たりにした香菜は、思わず悲鳴が飛び出す。
それでも夏樹は、
「くっ」
痛みを堪えるように頭を振って、再び、
「吾妻助けろ。頼む、香菜を助けてくれ!」
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