12 プライド

4/18
前へ
/127ページ
次へ
夏樹はギュッと香菜のことを抱きしめる。 腕の中に固く閉じ込めて、 「どけ! 女をこっちに寄こせ」 怒鳴る男にも怯まない。 ガンガンと鈍い音がするのは、夏樹が男から殴られ続けているせいか。 すっぽりと閉じ込められている香菜の位置からは何も見えない。 「夏樹いいから。放して、夏樹」 香菜はじたばたともがくが、夏樹の腕の力が緩むことはなかった。 「夏樹お願い。もうヤめて」 こんなヤツら、夏樹ひとりだったら、余裕で対処できたはずだ。 なのに今は、香菜を庇って、殴られるままになっている。 「夏樹、あたしは大丈夫だから」 言っても夏樹は石になってしまったように動かない。 ただ香菜を守る盾になって、ジッとしている。 『なんで!』 香菜は思う。 『夏樹なら、夏樹ひとりなら、簡単にやっつけちゃえるのに』
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

143人が本棚に入れています
本棚に追加