2 登場

4/8
138人が本棚に入れています
本棚に追加
/127ページ
でもすぐに、ハッと我に返る。 香菜にしがみ付いている男が、グリグリと香菜の胸に顔をすり付けてくる。 「こいつ、いい加減に――」 気持ち悪い。 身体と男の頭の間に手を突っ込んで、無理やり引き剥がせないかと頑張るのだが、やっぱり男の力相手ではビクともしない。 見かねた風にバーテンダーが、 「ねえ助けてあげようか」 体勢をかえないまま、のんびりと聞いてきた。 「さっきから、キミだけじゃどうにも出来ないみたいだし」 バーテンダーの言いようは本当だけれど、この緊迫感のなさはどうだ。 香菜が心底困っているのに、どこか面白がっている風情を隠そうともしない。 香菜はギリッと歯を食いしばる。 「ねえ。さっきからあんた能書きばかりよね。助けてくれるんなら、さっさと助けてくれたら、どう?」
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!