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でもすぐに、ハッと我に返る。
香菜にしがみ付いている男が、グリグリと香菜の胸に顔をすり付けてくる。
「こいつ、いい加減に――」
気持ち悪い。
身体と男の頭の間に手を突っ込んで、無理やり引き剥がせないかと頑張るのだが、やっぱり男の力相手ではビクともしない。
見かねた風にバーテンダーが、
「ねえ助けてあげようか」
体勢をかえないまま、のんびりと聞いてきた。
「さっきから、キミだけじゃどうにも出来ないみたいだし」
バーテンダーの言いようは本当だけれど、この緊迫感のなさはどうだ。
香菜が心底困っているのに、どこか面白がっている風情を隠そうともしない。
香菜はギリッと歯を食いしばる。
「ねえ。さっきからあんた能書きばかりよね。助けてくれるんなら、さっさと助けてくれたら、どう?」
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