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「おたくら佐々部組だろ。確かアレクローンって言ったっけ」
そこは香菜にも覚えがある。
カードを作るのがとても簡単だった会社だ。
長島が納得した、とうなずきながら、
「この間から続く過払い金請求の裁判のせいで、おたくもう、青息吐息だって? だから、こんな強硬手段に出てきたのかい」
「そ、そんなことはないですが……」
男がしどろもどろになりながら言い訳しようとするのを、
「彼女ねぇ、真面目に返済しようとしていたみたいだから、逆に目をつけられちゃったのか。
この子から上手いこと言って金をせしめるか、それとも風呂にでも売り払って、しばらくはしのぐつもりだったのかい?
本当におたくら、切羽詰ってるんだねぇ」
長島はおかしそうに笑うが、香菜は笑うどころではなかった。
まさか、真面目に金を返していた結果が、そんな風に利用されようとしていたとは!
恐ろしさに震え上がる。
と、
「――でもねぇ」
長島の声のトーンが急に変わる。
「シロウトさんを巻き込んで、ましてやウチの目の前でこの騒ぎだ。
てめえら、寝ぼけたマネしてんじゃねーぞ、あぁ!?」
「ね、寝ぼけてなんか……」
男が言い募ろうとするのを、
「残念ながら、こちらのお嬢さんの借金はウチで一本化するって、おたくの上とも話はついてんだよ。それを今さら横やりか? それがあんたらの流儀かい? それともマジで、ウチにケンカを売るつもりなのか」
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