12 プライド

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「佐々部さんとこのアレクローンが、もう潰れる一歩手前で、金策に駆けずり回ってるって話は、ぼくの耳にも入っていたからね。だから、キミの借金がアレクにもあるのなら、ヤツら絶対手を出してくるだろうって思ってた」 「だったら、どうしてちゃんと教えてくれなかったんですか」 なんてことのない風に言う長島に、香菜は、夏樹を治療する手を止めて睨みつける。 長島が最初から危険を教えてくれていれば、夏樹だって、こんな怪我をすることはなかったはずだ。 香菜だって、ちゃんと用心もした。 長島さえ、ちゃんと教えてくれてさえいれば……。 だけど長島は、 「忠告はしたよ。キミは狙われているって」 思い返してみれば、 「くれぐれも用心しときなよ。お姫さまは常に狙われているから」 なんて、ふざけた口調で夏樹に言っていた記憶がある。 だけど、あんな皮肉な調子で言われて、誰が本気にすると思うのか。
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