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夏樹の怪我は、本当なら救急車を呼びたいぐらいだったが、夏樹自身がガンとして拒んだ。
だから、仕方なく、香菜が応急手当てをしているのだが、夏樹の綺麗な顔は紫に腫れあがり、唇の端っこには血が滲んで痛々しい。
こめかみにも切り傷があって、固まった血は僅かの刺激でまた流れ出しそうだ。
それに背中だって、ひどく木刀で殴られていた。
あれで平気なわけがないのに、
「こっちは大丈夫。それとも香菜ちゃん、俺の服を脱がせたいの?」
なんてふざけて、夏樹は絶対に怪我の具合を見せてくれない。
「本人がそう言うんだから、いいんじゃないの」
長島まではそんな風に言うから、香菜も無理やり手当てするわけにもいかず、なす術もなく、ただ恨めしげに夏樹の背中を見つめるだけだ。
香菜を守るために何度も殴られて、けして平気なわけがないのに。
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