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でも夏樹にこんな無茶をさせたのは香菜だ。
全部、香菜のせい。
だから結局、香菜は、借金のすべてをナガシマファイナンスに一本化することを承知した。
長島にその提案をもらったとき、
「しつこい男は嫌われるぜ吾妻、香菜ちゃんにはきっぱりフラれているだろーし」
夏樹はまた、香菜を背中に庇ってくれようとしたが、
「ああ、だから今度の話はビジネス。彼女には川上清隆氏を紹介してもらおうと思ってね」
「キヨを?」
面識がないはずの長島の口から、キヨの名前が出てきたからびっくりする。
夏樹が情報通なことにも驚かされたが、この男の面識はどこまで及んでいるのだろう。
長島は、
「そう、川上清隆氏。彼が今おこなっている研究の、最終成果をウチで商品化しないかって話をしたくてね」
「!」
キヨが大学で続けている研究のことだ。
それがとても価値のあるものであることは、誰よりも香菜が知っている。
だから、
「キヨを、あたしのことに巻き込みたくはありません」
一度は断ると、
すると、
「やれやれ。キミはバカだと思ってたけど、本当にバカなんだね」
長島が言う。
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