3 訳

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そんな風にここ最近、香菜の様子がおかしいことに、職場のみんなも薄々気がついているだろう。 給湯室でひそひそと交わされる、女子社員の噂の元ネタが気になる。 視線が刺さってくる気がする。 職場にも、一度、電話があった。 借金のことがバレていない保証なんかどこにもない。 カードの登録時に実家の電話番号も書いたはずだから、実家にも連絡がいっているだろうか。 父親の看病と相手方への謝罪で疲れ果てている母親は、どんな顔で受け取るはめになったのか。 そして香菜は、恋人のキヨに別れを告げた。 今までどおり、キヨに服を買ってあげることは出来ない。 料理を作って、キヨのアパートで待つことも無理だ。 キヨを、香菜の起こしたトラブルに巻き込みたくはなかった。 そして今夜、誘われた合コンに、香菜は思い切って参加してみた。 会社のみんなが、香菜のことをどう思っているのか、ちゃんと知りたかった。 それから、 ――誰かに金を借りられないか、と思った。
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