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せっかくのお酒を味わいもせずに一気コールで豪快にあけるメンバーたちに、香菜は、こっそりと横をむいてため息をつく。
『もったいない。このお店のお酒、本当に美味しいのに』
香菜の前のグラスは、巨峰のセプドール。
カクテル・グラスに薄紫が広がっていてとても美しい。
季節のフレッシュフルーツカクテルとメニューにあったから、きっと本物の果汁を使っているのだろう。
お手頃価格でこの手間は、店が本物の証だ。
こんな風にお酒は最高なのに、メンバーだけがいただけない。
せっかくのカクテルを、味わうこともせずに、ただグラスを空けることだけを目的に、注文が重ねられるドリンクの数々。
そんなお酒は、もう存在自体が哀れだ。
手拍子ではやし立てながら一気飲みをする男性陣なんて、香菜はもう、見ているだけでうんざりなのだが、
人数合わせで参加した合コンである以上、勝手に帰ってしまうわけにもいかない。
せめて一次会の間ぐらいはいないと、主催者の顔がたたないのだ。
これでなかなか、給湯室の付き合いも大変である。
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