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もう、わけがわからない。
あんな綺麗な顔で、何を考えていたんだろう。
本当にからかわれてるのかもしれない。
そうだ、きっとそうだ。
だって絶対モテるはずだし・・・・ああやって、自分にぽーっとなってる子がいたら変な態度で追い払ってるんだ。
そう思ったらずーんと気分が落ち込んだ。
今日会ったばっかりでまだ恋とか・・・そこまでじゃないはず。
きっと、これは振られたんだ。
それでも、あの最後の笑顔を見てしまったから、気になるけど・・気になるけど・・・・・・・・・
きっと振られる人に、恋したくない。
あんまり関わらないようにしよう。
あたしはそう決意した。
そう決意して、それから1週間タクミくんを見かけることはなかった。
今まで見た事がなかったのだから当たり前なのかもしれないけど、なんだか拍子抜けしてしまった。
でもいけない。
こうやって拍子抜けするってことは、会いたいって期待してるってことだ。
麻美も大会前で部活が忙しくなって、一緒に帰ることもほとんどなくなってしまった。
他に友達がいないわけないけど、わざわざ一緒に帰ろうと声をかけるほどでもないから、麻美の部活が忙しい時期は、一人で帰ることがほとんどだ。
その日も、麻美はすぐに部活に行ってしまったから、あたしは帰る支度をしていた。
窓から外を見ると、黒い雲がどんよりと広がってきていて、今にも雨が降りそうだった。
まずい。今日は傘持ってきてないから早く帰らなきゃ。
急ぎ足で教室を出ようとしたとき、後ろから声をかけられた。
「花音ちゃん待って!」
里奈だった。
教室の一番前でいつものように担任のごっちゃんを捕まえて話していた輪から、こちらへ走ってくる。
「あのね、いきなりなんだけど・・・今日時間ないかな?」
里奈の華やかな笑顔が突然至近距離にきて、あたしはちょっとドキドキしながら言った。
「どうして?」
「今日ね、これから何人かでカラオケ行こうってなってて・・・花音ちゃんにも来てほしいなって」
里奈が人懐っこい笑顔で言う。
里奈とは仲が悪いわけじゃないけど、いわゆるクラスの目立つリーダー格の女の子だから、グループが違う。
カラオケに誘われるなんて初めてだ。
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