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あたしが返事に困っていると里奈が言った。 「あーもう言っちゃうね。頼まれたんだ、花音ちゃん連れてきてって。 工業クラスの男子に・・・・・。遠藤って知らないかな? あたし同じ中学だから。・・・どうかな?」 上目遣いでこちらの表情をうかがうようにしている里奈を見ながら あたしの頭はフル回転していた。 遠藤くんにたのまれて、あたしを連れていく・・・ 遠藤くんが来たらタクミくんも来るの? あたしはまたタクミくんに会える? でもいないかもしれない。 でももしかしたら・・・・・ ううん、でももう関わらないようにしようって決めたじゃない。 そうよ、そう決めた。もうあんなわけのわからない人… これ以上気になりたくない。 「花音ちゃん?」 「あ・・・ごめんね。やっぱりやめておく。遠藤くんて、あまりよく知らないし・・・。それに、雨降りそうだけど傘持ってきてないし。」 あたしは決心がにぶらないように早口でそう言った。 「そっか。そうだよね。 ていうか頼まれたから一応声かけたけど、正直あんまりおススメしないし遠藤!」 里奈はそう言って笑った。 「誰にでも声かけるって、噂は聞いたよ。」 あたしも苦笑いしながら言う。 「えっ違うよ。かわいい子限定だよ。誰にでもじゃないよ。」 と里奈は真顔で言ったけど、あたしぐらいの平均的な子に声かけるぐらいだったら「誰でも」だと思う。 あたしはとりあえず誘ってくれたお礼を言って里奈と別れた。 昇降口に向かう階段をおりながら、行かなかったカラオケの事を考える。 行くべきだったのかな。 あんな態度とられた後だけど、真相はわからないわけだし。 でも、そもそも遠藤くんがいるからって、タクミくんがいると決まってるわけじゃない。 うん。断って正解だったんだ。 あたしは自分をそう納得させた。 顔を上げると、下駄箱の外が少し暗い。 まずい。ほんとに降ってきそう。 あたしは急いで靴に履き替えて、外に出る。 ちょうど下校ラッシュで、他の生徒も空を見ながらなんだかんだ言いながら歩いていく。 あたしもその生徒たちの波に乗って少し急ぎ足で歩いていると、 校門のところでスッと誰かが前に出てきてぶつかりそうになった。
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