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家について部屋着に着替え、お母さんが温かい紅茶をいれてくれてたから、
居間のある1階に降りる。
紅茶を飲みながら、テーブルの横の写真たてを眺めていると、またスマホが鳴った。
「傘なかったからよかったね。それじゃあ、また明日ね!」
え・・・それだけ?
もう返信するなってこと?
あたしはガッカリして、スマホをテーブルの横に押しやった。
「なあに?そんな顔して。嫌なメールでもきたの?」
クッキーを持ってきたお母さんがあたしの顔をみて言った。
そんなに顔に出てたかな・・・
「ううん。別にそういうわけじゃないよ。」
あたしはクッキーに手を伸ばす。お母さんの作るクッキーは絶品だ。
今日のクッキーは生地にレモンピールが練りこまれてる。
バイトもダメで、門限も早くて不満に思うこともあるけど、こうやって自分に
手をかけてもらえてるのは幸せなことなんだろうな。
普段は思わないけど、こんな日はそう感じる。
「お父さん、傘持って行ったかしら・・・」
お母さんが窓の外を見てそわそわと立ち上がって
お父さんにメールを打ち始めた。
お父さんは朝も早くて夜も遅いから、あたしは土日ぐらいしか顔を合わせることがない。
その土日だって、もう高校生の娘とどこか行くわけでもなく、
夕飯を一緒に食べるぐらいだ。
それでもあたしはお父さんがすごく好きで、
いつか結婚するならお父さんみたいな人がいい。
お母さんのことを大事にしてて、仕事が普段忙しくて
夫婦の時間がなかなか取れないからか、日曜の朝はお母さんより早くおきて、
お母さんのためにコーヒーを淹れて枕元に運んでいってる。
お母さんも、そんなお父さんに色々世話を焼くのが楽しそうだし。
2人を見てると時々くすぐったいような気持ちになるけど、
あたしも将来はこんな夫婦になりたいって思う。
・・・もっともまだ結婚なんて、想像もつかない先の話だけど。
彼氏だっていないのに・・・・・
ここで拓海くんの顔を思い出してしまった。
雷から助けてくれた拓海くんかっこよかったな。
拓海くんは話す時、じっとあたしの目を見るから、恥ずかしくて真っすぐ
見返すことができない。
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