プロローグ

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あたしは先生にもらったばかりのプリントを見つめた。 全部で3枚。ペラペラの薄い紙に書いてある文字の羅列。 その一番上に書いてある数字は60点 73点 74点。 すごく平均的な数字。可もなく不可もなく・・・普通。 何事も平均的で普通のあたしにとってぴったりの点数だ。 鈴木花音。苗字まで普通。名前はけっこう気に入っているけど。 顔も、可愛いと言われるほどでもないけど、ひどくもない。 身長も158センチで普通。 勉強は点数のとおり普通。 そんな平均的なあたしはその日、いつも通りの普通の日常を送っていた。 いや、いつもよりも楽しい気分ではいたかも。 なぜならテスト終わって、憂鬱な答案の返却がこれで全部終わったから。 今回はあたしにしてはよく頑張って勉強したと思う。 -まぁ結果的には平均点の近くをうろうろしてるだけなんだけど、 何事も頑張ったってことが大事でしょ? そんなわけでその日、なんでもないいつも通りの日だけどあたしは少しウキウキした気持ちでいた。 ホームルームは終わったけど、担任のごっちゃんがクラスの一番目立つ里奈たちのグループにつかまっていた。 ごっちゃんは2年前に新任で入ってきた若い男の先生で、親しみやすく顔もなかなかかっこいいので女子に人気がある。 2年生にあがって担任がごっちゃんとわかって、クラスの女子たちはみんな大騒ぎだった。 若いといっても随分年上なのになぁとあたしは思うけど、里奈たちは「狙ってる」らしい。 里奈を筆頭に、美早紀、優 3人とも付き合ってる人がいると思ったけど。 大学生の彼氏でいつも車で迎えにきてくれるとか大声で話してるし。 でもごっちゃんもクラスの美人達に囲まれて、まんざらでもないように見える。 ま、なんにせよあたしには関係ないことか。入口のドアで騒いでいる里奈たちをぼーっと見ていたことに気付いて、目をそらす。 3枚のプリントをたたんで、カバンにしまった。 「花音!」 呼ばれてぱっと顔をあげると、いつの間にか麻美が目の前にきて、あたしをのぞきこんでいた。 「花音、どうしたの?ごっちゃん見つめて。年上は興味ないんじゃなかった?」 麻美がにやにやしながら言ってきた。
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