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「足立先生の資料は、奥の窓際だと思うぞ。じゃあ俺先に出るからな」 そう言ってさりげなくあたしの頭を、持っていた本でポンと触っていった。 ごっちゃん皆にこんなことするからモテちゃうんだろうな。 窓際に資料を置いて、戻ろうとしたとき、窓の外に隣の棟が見えた。 クラスの窓からは見えないけど、ここからだと見えるんだ。 そう思ってなんとなく棟の窓をみていたら、1つ下の階に拓海くんの姿が見えた。 こっちの棟で午前中の最後は授業って言ってたのに、どうしたんだろう。 でも遠藤くんの姿は見えないし、すぐに拓海くんの姿も見えなくなってしまった。 もうこっちに向かってるかな。 あたしは急いで資料室を出て、教室に戻った。 教室では麻美と遠藤くんが何やら楽しそうに話していて、 その横にいるのは 拓海くん。 どういうこと? 今さっき・・・・ 隣の棟の下の階にいたのに。 あたしが教室のドアのところで固まっていると、 拓海くんがこっちに気付いて近寄ってきた。 「日直お疲れ様」 「うん・・・いつ来たの?」 「俺も、財布忘れちゃって取りに行ってたから、今来たんだ」 そしてこっちも見ずにしゃべっている麻美たちを見て 「仲良くなったみたいだね。安心した?」 とまたあたしの顔を覗きこむ。 あたしは今起こっていることが理解できなくて、ちゃんと返事ができないでいた。 「拓海くん・・・お財布取りに行ったのって、今だよね?」 拓海くんは不思議そうな顔をして頷く。 「1階下だよね?あたし、今さっき資料室の窓から見たの」 拓海くんは何も言わない。 「でも、ありえないよね、だって・・・・隣の棟からそんなに早く来れるわけないもんね」 あたしは段々恥ずかしくなって、下を向いた。 きっと誰か違う人と見間違えたんだ。何言ってるんだろうあたし。 訂正しようと拓海くんの顔を見たら、拓海くんはじっとあたしを見たまま ほんの少し笑ってるような表情をしていた。
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