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「ごめん・・・そんなわけないのに。変なこと言ってごめんね」
拓海くんは何か言いかけたように口を開いて、また閉じた。
そして、今度はいつもの笑顔に戻って言った。
「大丈夫。行こうか。中庭で食べる?天気もいいし」
「うん・・・そうだね。じゃあお弁当もってくるね。
拓海くんは持ってきた?」
「俺は中庭行くついでに購買でパン買うよ」
普通の会話ができてあたしはホッとした。
バカなこと言って恥ずかしい。
麻美と遠藤くんも合流して、みんなで1階の中庭のブロックの上に座ってお弁当を広げた。
拓海くんは購買で買った焼きそばパンとあんぱんみたいな丸いパンを自分の前に置いていた。
「うわ花音ちゃんの弁当おいしそうだね。お母さんが作ったの?」
遠藤くんがあたしのお弁当をのぞきながら言った。
お母さんの作るお弁当は確かにすごくおいしいけど、ちょっとやりすぎな時があって、たまに恥ずかしい。
今日はハンバーグ、竹輪のカレー揚げ、卵焼き、野菜炒めとおかずがてんこ盛りなのに
何故かご飯のスペースもそぼろ、卵、インゲンがのった三食ご飯になっていた。
「お母さん、おかず多いんだよね・・・」
あたしは好物のハンバーグを、みんなが見ている恥ずかしさでつつきながら言った。
「花音ちのお母さん、花音のことめちゃくちゃ可愛がってるんだよ。
いまどきアルバイトも禁止だしね」
麻美は持ってきたおにぎりをかじりながらからかうように言う。
「いいね、大事にされてるんだ」
拓海くんが微笑んでそんなこと言うからあたしは多分真っ赤になったと思う。
恥ずかしい。
今までは、アルバイトさせてもらえないこととか
門限にうるさいことを同情されることはあっても、いい風に言われたことがない。
さすがに麻美も関心した顔で拓海くんを見ていた。
「拓海くんはいつもパンなの?」
あたしが何気なく聞くと、拓海くんがちょっと困ったような顔をした。
遠藤くんも拓海くんの様子をみている。
あたし何かまずい事言った・・・・?
「購買のパン、美味しいしね。このパン食べたことある?」
と、拓海くんがあたしに丸いパンを見せてきた。
なんだか一瞬空気が変わった気がしたけど、気のせいだったのかな。
大丈夫だったみたい。
拓海くんが見せてきたパンは食べたことがなかったから、あたしは首を横に振った。
あんぱんに見えるけど。
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