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「これね、生クリームあんぱん。あんこと生クリームってめちゃくちゃ合うんだよ。 購買のおばちゃんのご主人が閃いて作ったらしくて」 そう話しながら生クリームあんぱんをふたつに割って、中身を見せてきた。 うん、たしかにあんこと生クリームが半分ずつ綺麗に入ってる。 「これ初めて食べた時めちゃくちゃ衝撃受けてさ。購買のおばちゃんの旦那さん天才だなって遠藤に言ったんだけど‥‥ 普通にコンビニにも売ってるっていうから、俺はそんなわけないってコンビニ走ってさ」 「・・・あったの?コンビニに」 あたしは恐る恐る聞いた。 拓海くんは横でニヤニヤしてる遠藤くんをちらっと見て言った。 「あったんだよ‥生クリームあんぱん」 「天才じゃなかったんだね・・・」 麻美も残念そうに言う。 「ただごめん・・・拓海くん、あたしそれコンビニで買ったことある」  「え、本当に?」 そのまま麻美と拓海くんは生クリームあんぱんの話で盛り上がり始めて、 それを眺めながら、あたしは胸がちくっと痛むのを感じた。 ううん、そんな風に感じちゃいけない・・・。 麻美はあたしのために来てくれてるんだから。 そう自分に言い聞かせながらあたしはお弁当の卵焼きを口に入れた。 だけどあたしだってまだちゃんと話した事ないのに‥。 「大丈夫だよ、花音ちゃん」 そんなあたしに気付いたのか小声で遠藤くんが言った。 「あいつ、花音ちゃんと話せるのすごい楽しみにしてたんだよ。 多分緊張してるね、あんぱんの話引っ張るぐらい」 「大丈夫ってあたしそんな・・・」 うぐ。あたしったらそんなに顔に出てたのかな。 恥ずかしい。 遠藤くんは食べてたから揚げを飲み込むと、突然あたしに向かってウインクした。 突然でびっくりしてあたしはドキドキしてしまった。 そもそもかっこいい男の人に耐性がないのに至近距離で急にそんなことをされたら誰だってそうなると思う。 たとえ好きな人からじゃなくたって。 「遠藤!」 声がして拓海くんを見ると、遠藤くんのことを明らかに睨みつけている。 遠藤くんはそれを見てふぅっと息を吐き、何か聞こえないぐらい小さい声で呟やいてから、立ち上がった。 「麻美ちゃん、ちょっとあっちで食べない?俺と2人じゃ嫌かな」 「うん、いいよ」 遠藤くんに言われた麻美は、あっさりとそう言ってお弁当を持って立ち上がった。 そして遠藤くんと麻美、2人して顔を見合わせてクスクス笑いながら少し離れたベンチのほうに歩いて行った。 いつの間にあんなに仲良くなったわけ? 急に残されたあたしはパニックだ。
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