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「そんなんじゃないよ、ぼーっとしてただけ」
「そっか。もう帰れる?帰る前にちょっと寄りたいところあるんだけど、付き合ってくれない?」
麻美はあっさりと話題を変えてくれたから助かった。
教室残っていた数人にバイバイと言って二人で教室を出て廊下をすすむ。
正直、自分のタイプの人の話やいわゆる恋バナみたいなのがあたしはすごく苦手だ。
恋愛経験がないわけじゃないけど、振り返ってみても話すほどのこともない気がする。
麻美はすごく可愛いけど、あまり恋愛とかに興味はないらしい。
陸上部が忙しいからかもしれない。
黒髪でベリーショートがよく似合ってて背も高くてモデルみたいでかっこいい麻美は、
小学校のときからの親友だ。家も近所で親同士も仲がいい。
その上麻美の苗字「関根」とあたしの「鈴木」でクラスが一緒だと必ず席が近いのもあって自然に仲良くなった。
そうじゃなきゃ性格もほとんど反対な麻美と仲良くなんてなれなかっただろうなと思う。
「どこに寄るの?職員室?」
あたしがそう聞くと、麻美は眉間にしわを寄せて言った。
「ううん。ちょっと・・・一緒に来てほしいとこがあるんだ」
あたしはふーんと言ってちょっと不思議に思いながらもずんずん歩く麻美の隣を遅れないように必死に歩いた。
いつもは下る階段をのぼり、東の渡り廊下のほうに進む。
こっちのほうはほとんど来たことがない。
ここの学校は一般クラスの他に、工業クラスやスポーツ特進クラスがあって、この棟は、その特殊なクラスの生徒たちが使っている棟だ。
文化祭や体育祭のイベントはもちろん一緒にやるが、その他で顔を合わせることはほとんどない。
「こっちって・・・なんか一人じゃ来づらくって。もうすぐ大会があるから、こっちの顧問の先生にも見てもらわないといけなくてさ」
あたしはうんうんと頷きながら、麻美と一番奥のスポーツ特進クラスに向かった。
「あ、まだこっちHR終わってないのか」
手前の2クラスある工業クラスの前を通りながら麻美が言った。
あたしもドアのガラスから教室を見る。皆前を向いて先生の話を聞いていた。
全員男だ。
「うわ、工業クラスって噂には聞いてたけどほんとに男ばっかなんだね」
「ほんとだね・・・」
麻美とあたしがひそひそ話していると突然ドアが開いて、先生が出てきた。
他の生徒たちもつ次々と席を立つ。
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