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「花音ちゃんの事を色々聞きたくて、今日誘ったんだけど。
俺の方が色々聞かれちゃって‥‥上手く答えられなくてごめんね。」
「‥上手くなんて、答えなくていいよ」
あたしがそう言うと拓海くんは驚いたように目を見開いて、瞬きをした。
「あたしだって、拓海くんの事色々聞きたかったんだから。上手く答えなくていいから、ただ‥‥教えて欲しかったの、拓海くんのこと」
あたしにしては良く頑張って言った。
いつもならこんな事言えないけど、拓海くんにはちゃんと伝えたい。
拓海くんは、優しい目であたしを見つめて、静かに言った。
「耳が良いって言ったのは本当だよ。
さっきの遠藤の声も聞こえた。
それで‥‥遠藤に・・・」
「え?」
「遠藤に、ドキドキしてたでしょ?花音ちゃん。
あの心臓の音は‥‥あれは嫌だったね‥‥俺は。
だからひとつ試したいことがあるんだけど、いい?」
そう言うと拓海くんはあたしの膝の近くの地面に片手をついて身を乗り出してきた。
風がふわっと通りぬけて拓海くんとあたしの髪の毛をなびかせる。
嫌だったってどういうこと?
言われた意味を考えたかったけど、あたしは目の前にいる拓海くんから目が離せないでいた。
拓海くんは身を乗り出したまま急に顔を近づけてきた。
あたしの心臓はもう壊れそうないきおいでバクバクと鳴っている。
こんなに近くで誰かの顔を見た事も、見られた事もない。
拓海くんの顔をもっと近くで見ていたい気持ちもあったけど、
こんな近くで見つめられることに耐えられない。
あたしはさっと下を向いた。
絶対、変な顔してたあたし。
拓海くんて、初めて会った時からなんでこんなに人の顔をじっと見てくるんだろう。
あたしの心臓はまだうるさいし、顔も絶対赤いし、逃げ出したいぐらい恥ずかしい。
すると拓海くんは身体をおこして、あたしから少し離れた。
拓海くんは自分の口元に手を持っていって笑いを抑えるような仕草をした。
「ごめんね・・・・。急に。けど、安心した」
あたしは訳がわからず、熱くなっている頬を手で抑えた。
「遠藤の時よりすごい心臓の音だった」
‥そういうことか。
「もう!」
あたしは拓海くんの胸を叩いた。
拓海くんは堪えきれなかったようで、
大声で笑った。
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