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その後は散々だった。  出す教科書は間違えるし、 何回ノートに字を書いてもシャーペンの芯が折れた。 理由は分かってる。 さっきの拓海くんのアップが忘れられないからだ。 あの長い睫毛の間から見えた目。 近くで見ると吸い込まれそうに深い色の瞳‥‥ また芯が折れた。 自分がこんなに男の子のことでダメになってしまうなんて知らなかった。 麻美は何も聞いてこない。 というか、麻美よりも教室に戻るのも遅かったし すぐ授業が始まってしまったからだけど。 麻美と目が合ったから、口パクでありがとうと言ったら 麻美は何が?というようにとぼけた顔をしてきた。 こういうところ助かるなぁ、とあたしは思う。 何本もの芯を犠牲にしながら授業が終わった。 先生が教室から出るとすぐに麻美があたしの席に来た。 目がキラキラしている。 「花音・・・で、どうだったの?ちゃんと話せた?」 「うん。話せたよ」 あたしはそう答えて、さっきの拓海くんを思い出してまた頬が熱くなるのを感じた。 「麻美ありがとう。遠藤くんと二人になっちゃってごめんね」 「いいよそんなの。話してみたらいい人だったし」 麻美はあっさりと答えた。 「拓海くんのことどう思った?•••かっこいいよね?」  あたしが聞くと麻美はなぜか目をキョロキョロさせた。  そしてきまずそうな顔で言った。 「うーん。顔は綺麗だったような気がするけど・・・。  なんだろう、あんまり印象に残らないっていうか。  あ、でもすごく優しそうだったよね!そこはすごくいいと思うよ」  えっ。  あたしは驚きで言葉が出なかった。  印象に残らない?拓海くんが?  あたしからすると芸能人でもおかしくないぐらい目立つと思うんだけど。  好みの問題?
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