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麻美は奥のクラスも終わったかなぁと歩いていったしまったのであたしは慌てて後を追いかけた。
出てきた生徒たちの何人かが麻美を興味ありそうに見ていたから、きまずかった。
本人は自覚ないけど、目立つんだから・・・。
あたしは生徒たちの間をうつむいてすりぬけて、麻美のいるスポーツ特進クラスに向かって歩いていた。
「あっ」
そのとき、工業クラスから出てきた生徒とぶつかってしまった。
あたしの持っていた鞄が落ちて、鞄の外ポケットに入っていた定期入れが落ちる。
ぶつかった男の子がさっとかがんで落ちた定期入れと鞄を拾ってくれた。
「ごめんね・・・・ぶつかっちゃって。はいこれ」
と言って渡してくれる。
「ううん、あたしこそごめんなさい。ありがとう」
鞄を受け取って、男の子の顔を見た。
すごくカッコいい。背も高いし、さりげなくセットしてある髪の毛もよく似合っている。
「あっちの棟の子?誰かに用事?」
そのカッコいい男の子がニコニコしながら聞いてきた。随分フレンドリーな人なんだな。
「あ、えっと・・・友達の付き添いで・・・」
と麻美の行った方を見ると、麻美は目当ての先生を捕まえて何か話していた。
「あ―あの子陸上部の子だよね。あの子の友達かぁ」
「麻美を知ってるの?」
「有名だよ、あの子。美人だけど、誰も相手にしてもらえないって。」
男の子はおかしそうに笑いながら言う。
こっちの棟の子にも人気があるなんて、やっぱり麻美はすごいなぁ。
「じゃあまたねタクミいこうぜ」
そう言って男の子は自分の後ろにいる男の子を振り返った。
―――ちょっとまって。え?
あたしはびっくりして目が離せなかった。
後ろにいた、タクミと呼ばれた男の子は、小さく あぁ。 と呟いて下を向いたままだ。
だけど、下を向いていてもわかる顔立ちの綺麗さ・・・何よりもオーラというのか彼のまわりの空気だけが違って見えた。
さっきの男の子よりもさらに少しだけ背が高い。
少し伸びすぎな黒い髪の毛も、彼の綺麗な顔のまわりをふちどっていて、ますます魅力的に見せている。
細い顎に、切れ長の目・・・
どうしよう。
彼から目が離せない。
行こうぜ、といったわりに最初の男の子はまた違う生徒と喋りだしていて、タクミという子はその輪に入るでもなく壁にもたれてまた下を向いていた。
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