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あたしがぼーっと熱にうかされたように彼を見ていると、
突然パッと彼が顔あげてこっちを見た。
突然顔をあげたから、あたしはとっさに目をそらすこともできずに彼と目が合う形になってしまった。
なんでだろう・・・
彼は、心底驚いたような顔であたしを見ている。
時間にしたら目が合ってたのは1,2秒だったと思うけど、とてつもなく長い時間に感じて、
あたしがきまずくなって目をそらした。
一瞬の事だったのに、心臓がドキドキしている。
「花音!」
いつの間にか麻美があたしの前に立っていた。
「後ろにいるのかと思ったら、ここにいたんだね。ついてきてもらったのにほったらかしてゴメン!」麻美は両手をあわせてこっちを見てる。
「ううん違うの。あたしが人とぶつかっちゃって・・・・・・」
どうやらやっと話がおわって帰るらしく、さっきの男の子とタクミと呼ばれた男の子があたしと麻美の横を通る。
「バイバイ!」
鞄を拾ってくれたフレンドリーな男の子があたしと麻美に手を振って笑顔で通り過ぎる。
あたしもぎこちなく手を振り返した。
タクミと呼ばれていたかれ男の子もこっちを見たので、あたしはまた心臓がキュっとなるのを感じた。
「え、花音、遠藤と知り合いなの?」
2人が行ってしまってから麻美が言った。
「遠藤くんていうの?!」
あたしは思わず食いついた。
「なんだ・・・・知り合いじゃないの?気をつけなよ、有名人だよ。女癖悪いって。チャラチャラしてさ・・・かわいい子見つけると絶対声かけるんだって!」
チャラチャラ・・・それはきっとタクミくんのことじゃない。
もう一人の男の子のことだ。
「ねえ麻美、その遠藤くんと一緒にいた背の高い子の事は知らない?タクミくんていう・・・」
「え?誰か一緒にいた?」
「いたじゃない・・・髪が黒くて・・・・えーと、とにかくすっごくかっこよくて・・・・」
とここまで言ってあたしは急に恥ずかしくなった。
麻美を見るとにやにやしてこっちを見てる。
「ふーん。珍しい・・・・花音がねえ」
「やめてよ・・そんなんじゃ・・・・」
とあたしは言ったけど、否定もできなかった。だって、あんな人、ほかに見た事ない。
「タクミだか誰だかわからないけど、応援するから!」
麻美はカラっとしたかんじで言って、あたしの肩をたたいた。
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