プロローグ

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けっこう人がたくさん降りたから、あと3駅だけど近くのあいてる席に座った。 そしてなんとなく麻美が降りた方と反対側のドアの方を見ると、そこに、さっきの男の子 「タクミくん」が立っていた。 しかも、こっちを見てる。 あたしはびっくりしてぱっと目をそらした。 いつから?最初から同じ車両にいたの?混んでたから全然気が付かなかった。 電車乗る前に散々彼のことを話してたこと、聞かれたかな・・・。 また一瞬見ただけだったけど、やっぱりかっこよかった。 ・・・同じ学校の制服だったからあたしのこと見てたんだよね。 あの綺麗な切れ長の目で見られてたと思うだけで頬が赤くなるのを感じた。 ちょっとの間、携帯をいじったりして下を向いていたけど、どうしても我慢できなくてもう1回顔をあげてさっきのドアのほうを見る。 えっ。タクミくんはまだあたしのことを見ていた。 そして目が合っているのに、表情ひとつ変えない。 なんで?なんでこっち見てるの? ・・・なんであたしは目がそらせないんだろう。 その時急にタクミくんは我に返ったように目を見開いて、またさっきみたいにびっくりしたような顔であたしを見てる。 もうわけがわからない。 じっと見てたかと思うと、急に珍しい生き物でも発見したような顔して・・・。 もしかして、あたし何か変なのかな?巨大なゴミが顔についてるとか、頭に鳥のフンがあるとか。 慌てて鏡を取り出そうとしたけど、麻美がさっきまで一緒にいたんだからそれはないかと思いなおした。 じゃあどうしてそんな顔でこっちを見てるの? 耐え切れなくて目をそらしたけど、明らかに視線を感じる。 あたしは自分の体温がどんどんあがっていくのがわかった。 いくらなんでも失礼じゃない? 見つめられてドキドキしていた気持ちが、少しずつ怒りに変わっていく。 なんでこんな思いしなきゃいけないの。 降りる駅にもうすぐ着くというアナウンスが流れた。 げっ 次開くドアは、びっくり顔の美青年がいるほうだ。 ホームに電車が到着し、ドアが開くのと同時に席を勢いよく立ち、下に顔を向けたままドアに向かって速足で歩く。
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