プロローグ

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彼とすれ違う時、向こうが寄りかかっていた背中を壁からはなしてこっちに身を乗り出してきたのがわかった。 「あの・・・」 思ったよりも低い声でそう声をかけられてビクっとなりながらも、そのままホームに降りた。 ここの駅は住宅街で、家以外なにもないのもあって降りるひとは少ししかいない。 後ろでドアが閉まる音がして、あたしは振り返った。 タクミくんが、ドアの向こうでこっちを見ている。 だけどもう驚いた顔はしていない。 ちょっと微笑んだような表情で・・あたしを見てた。 聞こえないけど、何かドアの向こうで言ってるのが口の動きでわかった。 「バイバイ」と言ってるのがわかった瞬間 電車が動き出して、 あたしを残して行ってしまった。 あたしは、なんだかわけがわからずに、去っていく電車をただ見ていた。
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