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――お掛けになった電話は、現在電源が入ってないか、電波の届かない所にいる為かかりません。――
「ウソでしょ!?」
亜里実はすっとんきょうな声を上げてしまう。周囲の視線を集めて慌てて背を丸める。駅のホームの売店横まで移動して、もう一度電話をかけた。
さっきと同じ音声ガイダンスが流れて、ガックリ肩を落とす。
「……もうっ! 有り得ないからっ! 電波の届かない所なんて、まず有り得ない。絶対絶対、電源が切れてる!」
亜里実は憤慨して、足を踏み鳴らす。……でも、直ぐにため息をついた。
解っている。よぉく解っている。カレシの清之助は、名前からして今どき見かけない程、時代がかった名前だが、その名前にピッタリな浮世離れした男だと。
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