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哀ネクライネ
私、貴方に逢えて嬉しかった。
でも、同じくらい悲しかった。
だって、出逢ってしまえばいつか必ず「お別れ」がやって来るんだもの。
でも、いまそれには触れないでおこう。
今、こうして貴方が腕に抱いてくれる時間が、とても幸せだから。
いちばん幸せな「オンナノコ」でいられる。
◆
ねえ、貴方は人気者だね?
「バケモノのくせに」
待ち合わせてるときに、話しかけてきたコにそんなことを言われたよ。
『でもごめんね、譲る気はないの』
そう言ったら石をぶつけられちゃった。
痛かったけど、耐えた。
恋は命がけだね。
今日、改めて思ったよ。
ねえ、本当に私は貴方の傍にいてもいいのかな?
今いる場所が、本当は別の人の居場所だったんじゃないのかって思ってしまう私は間違ってる?
もし、私が誰かの居場所を奪っているのだとしたら…消えてしまいたい、なんて。
そんなことを考える自体がおかしいんだって解ってるけど
、なぜか不安になってしまう。
私ね、貴方が大好きよ。
伝わっていればいいな。
でも好きすぎて、伝えなくちゃいけない秘密をいつも嘘で濁している。
貴方が思うより私は何倍も小さくて、恥ずかしいよ。
ごめんね。
本当はね、私は化物なの。
貴方が何より憎んでいる化物なの。
嘘をついていて、本当にごめんなさい。
消えない悲しみも綻びも、貴方といれば超えられた気でいた。
せめて思い出だけでもいいから、ささやかな時間を守るために、私には何ができるかな。
ねえ貴方…。
覚えている?
罠にかかって死にかけていた私を、貴方は殺さずに手当てしてくれた…あの夏の日を。
あの日からずっと、いつか出逢えると信じて探していたの。
そして、やっと見つけた。
私、今度こそあなたに秘密を伝えるわね。
たとえ私を撃ち殺す相手が貴方でも、逃げない。
だからこれが最後。
ねえ大好きな貴方…。
最後に、貴方の名前を呼んでもいい?
どんな苦しみも悲しみも、痛みだって、貴方が呼んでくれれば溶けていくような
幸せで溢れて貴方が見えない。
この想い、狐の墓場まで持っていくわ。
ねえ、いい考えでしょう?
私、とても幸せよ。
貴方が呼びかけてくれるだけで、痛みが消えていくんだもの。
ああ、名前を呼んでくれるのね?
嬉しいなあ。
じゃあ私も、夏の夕暮れが訪れる度に貴方の名前を呼ぶね。
今度こそ、幸せに、なれたらいいな。
今まで、大切にしてくれてありがとう。
じゃあ、またね。
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