幸先スリル

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 少し混んでいたが、ひとりなので問題なくチケットも取れた。少し切ないラブストーリーの映画。流石にカップルが多いな。  気まずい雰囲気に圧倒されながら席に着く。始まり開始のブザーが鳴り暗くなり始めた。そして来週は晴人とスパイ映画を見に行こうと、気持ちを切り替えた時だった。  あれ、晴人じゃね? 用事がてきたってコレ観たかったのかよ。  くすっと笑った矢先、晴人に親しく女の子が寄り添って笑っている。  なんで? 彼女……かな。  笑顔から一瞬にして険しい顔になる。淳にとって映画どころではない。目の前にある心配事が現実を蘇らせた気がした。  もうそれからは映画のストーリーなんて頭に入らない。二人の楽しそうな影だけを見つめ、不安が募る。  俺と付き合ってるんじゃないのか?  男同士、堂々と恋人宣言は社会的に躊躇われるものの、それを知ったら彼女が一番可哀想だ。淳は何故か自分よりも彼女の事が心配になった。やはり、俺達の付き合いは無理があったのかもしれない。愕然としながら、どうしようと悩み始める。  あいつは優しいから、俺を受け入れてくれただけで、本当は女が好きなんだろうな。健全な男ならそれが普通だ。
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