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もう、うまくしゃべれないことなんか、どうでもいい。
ただ、さけんだ。
「そんなの、ダメだ。そんなんで絵をかきつづけちゃ、ダメだ。そんなんで、笑えないなんて、ダメだ。お父さんのために何かするのはダメじゃないけど。それは、自分が。楽しくて。おかしくて。うれしくて。絵を描いて。楽しくて、笑って」
隆は、自分がなにを言ってるのか、わからなかった。
「誰かが、よろこんで、居てくれるから。毎日が。つらくても。うれしくて。たのしくて」
ただ、思いつくかぎり、さけんだ。
美佐子が、笑っていた。
「なにそれ」
うれしそうに、笑っていた。
「本当。小寺くんは、おかしいね」
美佐子は、涙をぬぐった。
隆は、急にはずかしくなった。
真っ赤になって下を向いた。
「これ。あげるよ。今日かいたやつ」
美佐子が、さっきまで絵を描いていたメッセージカードを、差し出した。
隆は受け取ったメッセージカード、目をおとした。
そのメッセージカードのなかで、ピエロが、お辞儀をしていた。
花畑の真ん中で、大げさな仕草で、深々と、ピエロがお辞儀をしていた。
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