ぼくが 持っていく

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 放課後、俊樹がほかのクラスの女子生徒に、引っ張られていった。 「テンボ、かえりコンビニよるから、校門で待ってろよ」  そう言いながら、俊樹は女子生徒に何かをささやいた。  女子生徒が笑い声を上げながら、俊樹を教室から連れ出した。  俊樹は、昔から要領がいい。  話を合わせるのもうまいし、勉強もスポーツもできる。  その上、顔もいい。  背も高い。  隆とは、なにもかもが正反対だった。  隆は、俊樹を見送りながら汗をぬぐった。  この頃、急に暑い日がつづいていた。  もうすぐ、夏休みになる。  受験も近い。  「こんなに、のんびりとしていられなくなるな」  そう思いながら、隆はカバンを取ろうとした。  教室の中を、風が吹き抜ける。  教室のカーテンが、風にゆれていた。  教室の後ろの席で、美佐子の背中までのびた長い髪もゆれていた。  美佐子は、まだ机に向かって絵を描いていた。
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