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「飯塚さん」
隆に急に声をかけられ、美佐子は驚いて顔を上げた。
「いつも、絵を描いているね」
隆は話しかけたはいいが、なにを話していいのかわからず、ただ見たままを口にした。
「そうね」
美佐子は、興味なさそうに返事をすると、顔を下に向けた。
隆は「やっぱり自分には無理だ」と思った。
俊樹のように、器用にはしゃべれない。
「さらば」
隆は、またやってしまった。
適当にごまかして、帰ろうそうとしただけなのに。
口から出た言葉は、ごまかしにもならない言葉だった。
「なにそれ」
美佐子が、下を向いたまま、無表情な言葉を言い放つ。
いつも助けてくれる俊樹は、今はいない。
隆は作り笑いをして、立ち去ろうと思った。
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