ぼくが 持っていく

　でも、それでいいのか。

　このままでいいのか。

　また、そうやって過ぎていくのか。

　そう思ったら、隆は、たまらなくなった。

「飯塚さんが、笑ってたから」

「えっ」

　美佐子は、今度は驚いて声を上げた。

　隆は美佐子と、目が合った。

　その目が、つらそうに見えた。

　おこってはいない。

　何か、つらそうな目に見えた。

　もう、隆は話すのを止められなかった。

「今日、笑ってたよね。絵を描きながら、下向いて」

　隆は、一気にしゃべり出した。

「飯塚さんは笑うから、明るいひとなんだって。いつも笑えないのは、おかしいんじゃないかって」

　美佐子は驚いた顔で、隆を見ていた。

「ぼくはいつも変なこといっちゃうけど。俊樹がいるから、なんとかなって。でも、飯塚さんは、笑えないなら。おかしいなら。笑わないと。笑うのは、本当に。大切な。だから。ぼくは」