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○●○●○●
平日の昼間。
人気のない住宅街を闇雲に歩く。
カツ、カツ……。
足音に集中していないと何かが一気に崩れてしまいそうで、ろくに前も見ずにひたすら歩いた。
遠雷が響いて顔を上げると、頭上に渦巻く不気味な雲が情けない私を嘲笑う。
どれ程歩いただろうか?
いつの間にか首筋を伝っていた汗がすうっと襟元に吸い込まれてた。
「……迷っちゃったな」
アスファルトを刻むヒールの音が小さな呟きを掻き消せば、何もかもどうでも良くなってーーーー。
ポツリ。
目元で弾けた大粒の水滴に目を閉じると、それはまるで涙のように頬をするりと滑り落ちた。
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