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「俺、明後日サッカーの大会が」
「ならば問題ない。封印は夜に行うのだからな。私が夢の国から戻ってくるのは、三日後の早朝だ。無理だ。貴様が黙って、ちゃっちゃと片付けてしまえば良いだけの話だ。極暑の中を戻ってきたんだ。これ以上私を苛つかせるな、三下風情が」
言葉のチョイスというものは、団体生活において、つくづく大切なものだと思う。
ピキッという音が、俺の中で弾ける。
「ちょっと鬼頭さん。その言い方はあんまりなんじゃ……」
苛ついた俺が、鬼頭にくってかかろうとしたその時、俺の後ろの方で頭を激しく掻きむしる音と唸り声が聞こえてきた。
そういえば、この人の存在をすっかり忘れていた。いや、元々存在感消している人だから、忘れても仕方がないか。
「……うるっせぇな。痴話喧嘩なら、他所でやれ、他所で」
振り返ると、俺の後ろの自分のデスクに突っ伏して寝ていた先輩の綾小路さんが、不機嫌そうに此方を睨んでいる。
「いや……でも、鬼頭さんが」
「お前が悪い。全面的に悪い。以上」
「なっ……」
恐らく爆睡して意識が途絶えていたので、今までのやり取りをこの人は全然聞いていない。その上で、俺を悪者にするという、この始末のおえなさといったらない。
それもこれも、この綾小路翔という男が、女性にだけ優しいという、徹底したフェミニストだからである。
俺より十歳歳上である、このどフェミニスト先輩は、昨晩合コンで知り合って良い感じだった美人看護士と、初めてデートしてフラれたらしい。
それで明け方までやけ酒を飲んだ挙句に二日酔いとなり、朝からほぼこんな調子でデスクとお友だちなのだ。
こんな状態でいても、どこでやっているのか仕事はきっちりといつの間にか片付いているので、課長も特に注意はしない。
普段の事務仕事だけでなく、封印業務にしても、四国でこの人の右に出る者はいない敏腕公務員だからというのもある。
切れ長の瞳と言えば聞こえはいいが、単なる公家顔だ。身長は俺よりも高く、やや細身。
嘘か本当か定かではないが、課長が言うところによれば、彼は稀代の陰陽師安倍晴明の末裔らしい。
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