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「そういうの、あんまりいい思い出ない」
遠い目をするマリク。
まぁ、確かにそんなものかもしれない。
「なんか、分かりやすくご褒美とかあった方が裏切られた感に苛まれないし……」
少しは大人になったかと思えば、目の前に人参がないと動かないようでは、やはりまだまだ子ども。
されど、子どもの機嫌を調整するのも大人の仕事。
指環をいじりながら、何でもないように、ごくごく自然体を装って私は返事をした。
「なら、私がご褒美あげようか?」
その言葉は絶大だった。
「え、ほんとに?」
再び目をキラキラさせるマリク。
期待と好奇心でいっぱいみたい。
私は、マリクの顎を持ち上げた。
突然の事に驚くマリク。
私は少し伏せ目がちになりながらも、勇気を振り絞って言葉を紡いだ。
「貧乏チームでゴメンね。
私には、こんなことしか出来ないけど……」
言いながら両手でマリクの手を握ると、私の胸の前に持っていく。
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