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街から離れた平地。
月明かりのない新月。
星明かりだけが頼りの世界は、そのほとんどを雲に覆われて、暗闇の世界。
その世界にぼんやりと光る、大地に描かれた不可思議な紋様。
その中央に立つのは、カミラク。
いつものローブ姿ではなくて、見慣れぬエキゾチックな衣装に身を包んだ姿は、普段より格段に身体のラインが強調されて、露出もある今は、とても艶やかな雰囲気を醸し出している。
しかし、それでいて厳かな、神々しさを纏う姿は、平原に佇む妖精のよう。
「なぁ、屋台、とかは?
あと、なんでカミラクがあんな……」
「しっ。
静かにしないと大地にめり込ませますよ?」
初めての光景と、予想外の光景のダブルパンチで困惑するマリクを、セリパが黙らせる。
最愛の人の大事な時間。
今のセリパなら、誰が相手でも確実に相手を大地にめり込ませる。
一瞬だけ放った殺気に気付いたマリクは、
「ご、ごめん」
と、謝った後、カミラクに視線を固定した。
賢明な判断だと思う。
どれだけそうしていたのか。
誰も微動だにしないなか、雲だけが動いて、少しずつ夜空に星が浮かび上がる。
「始まるわね」
私の呟きの直後、カミラクが動いた。
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