蒼いルビー

2/5

9人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
街から離れた平地。 月明かりのない新月。 星明かりだけが頼りの世界は、そのほとんどを雲に覆われて、暗闇の世界。 その世界にぼんやりと光る、大地に描かれた不可思議な紋様。 その中央に立つのは、カミラク。 いつものローブ姿ではなくて、見慣れぬエキゾチックな衣装に身を包んだ姿は、普段より格段に身体のラインが強調されて、露出もある今は、とても艶やかな雰囲気を醸し出している。 しかし、それでいて厳かな、神々しさを纏う姿は、平原に佇む妖精のよう。 「なぁ、屋台、とかは? あと、なんでカミラクがあんな……」 「しっ。 静かにしないと大地にめり込ませますよ?」 初めての光景と、予想外の光景のダブルパンチで困惑するマリクを、セリパが黙らせる。 最愛の人の大事な時間。 今のセリパなら、誰が相手でも確実に相手を大地にめり込ませる。 一瞬だけ放った殺気に気付いたマリクは、 「ご、ごめん」 と、謝った後、カミラクに視線を固定した。 賢明な判断だと思う。 どれだけそうしていたのか。 誰も微動だにしないなか、雲だけが動いて、少しずつ夜空に星が浮かび上がる。 「始まるわね」 私の呟きの直後、カミラクが動いた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加