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亡くなった彼は、最後に何を言いたかったのだろうか。そこが気になった。彼の苦しみながら死んでいく姿が彼女の脳裏から離れなかった。彼女は、予想してはいなかった。事件の時は匂いがするはずだったのに匂いがなかった。彼は、何かを私に教えたかったのだろうか。彼が亡くなるなんて思いもしなかった。亡くなった彼の遺留品を調べた。その中には彼がいつも持っていた手帳と携帯がなかった。手帳には、彼の習慣で彼はいつも手帳を大事に持っていた。私も中身までは分からないが確かに彼は、持ち歩いていた。その手帳がないのである。犯人は、彼の死んだ後に持ち去ったに違いない。彼の自宅は私と彼が入るまでの時間に犯人が入った可能性がある。彼の自宅は、3階だ。自宅のコップから毒物であるトリカブトの粉末が微量だが検出された。彼は、犯人に心当たりがあったのでは無いのか。犯人は、口封じにトリカブトを彼が普段から使っているコップに綿を使いコップの渕に塗った。そして、彼が苦しんでいる内に犯人は出て行った。携帯と手帳を彼から奪うと犯人は、今頃、くしゃみをしているだろう。悔しいが犯人には、やられた。だが彼女は、諦めなかった。犯人の匂いの匂いで合って欲しい。犯人は、だいぶ汗を掻いた筈だ。その匂いは、記憶したが余りにも他の匂いと一緒になっている。私は、自信がなかった。これが犯人に結び付くのか。疑問に思えた。 この事が、果たして事件と関係性があるのか。私は、匂いには敏感な方だ。だが、その事とこの事件とは無関係な気がしていた。その匂いは、亡くなった彼の匂いかもしれない。もし違うとすれば誰の匂いなのだろうか。 あくまでもそう願いたい、と思っていたかった。だが、犯人は、私より遙かに上だった。匂いを覚えた私は、何か違和感を感じた。
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