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姉は海外留学した。兄は北海道の大学に進学した。どちらの帰省も飛行機使用とあって、なかなか会えない。
そんな僕は次男の末っ子、高校二年生だ。
進路に悩むお年頃でもある。
「直也、目指したい大学はあるのか? それとも専門学校に行くのか?」
「うーん、色々悩むけど、もう受かったらどこでもいいって感じかなあ。お父さんはどんな学生さんだった?」
「そうだなぁ。まあ、遊びほうけてたな」
休日になるとそんなことを話しかけてくる父は、こうしてみている分には話も通じるし、悪い人ではないのだ。
「あなた、直也。コーヒーが入りましたよ。今日はね、直也が買ってきてくれたゼリーがあるから、それでお茶にしましょう」
「本当に直也はいい子だな。お母さんの手伝いはするし、よその子みたいに反抗もしないし」
「そりゃね。・・・由利恵姉さんや和司兄さんと違って、そこまで主張を繰り広げなきゃいけないこともないしさ」
照れ臭く答えてしまうが、それでもやっぱり僕は母が好きだ。母は頼りないところもあるが、父を大事にしているし、僕たち三姉弟にも愛情をもって育ててくれた。
「直也は結局どこを目指すの? お姉ちゃんやお兄ちゃんみたいに遠くへ行っちゃうのかしら」
「うーん、色々と考え中。行きたい場所よりも受かることが最優先かな。進学なんてしてみないと、具体的に想像なんてできないよ」
「なんだなんだ、直也、どうせならちゃんと未来を見据えて考えろ。ちゃんと父さんだって調べてやるし、受験に集中できるよう協力してやるからな。遠い塾だって、帰りは迎えに行ってやる」
「うん、ありがとう。お父さん。頼りにしてる」
にこにこと答えるが、僕は絶対に両親に希望する進路を言う気はない。いや、いずれはバレると分かっているが、口出しされないように出来る限り隠し通すのだ。
そう、変なちょっかいを出されない為に。
「あなたはいつだってそうね。優しいし、いつだって子供達を愛してくれてる」
「そうか? 母さんが育ててくれたから、由利恵も和司も直也も、みんないい子に育った」
ほのぼのと微笑み合う、愛のある夫婦の会話だが、僕は知っている。
父にとっていい子なのは、由利恵姉さんと和司兄さんだけだってことを。
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