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当時、知己の症状をいくつかの病院で診察してもらっても原因不明、もしくは親しい友人を亡くしたことによる心神耗弱と言われたという経緯までは知っていたが、その後暁人は改善した経過は知らない。体の異変は、いつまで続いたのだろう。
今の知己にそんなそぶりはまったく見えない。
「あのとき、アキがマフラーを貸してくれただろう?」
暁人は目を瞬かせた。知己がそれを覚えていたことに驚き、そして甘酸っぱい気持ちがぶり帰る。寒さを感じないという知己に無理やりかけたマフラー。
知己は春先になり汗ばむような陽気になっても、厚手のマフラーをぐるぐる巻きにしていた。
あのとき、そんな知己に駆け寄り、「もう十分暖かいから、マフラーは取ろうか」と言ってその首から外すと、大雪の日にマフラーをかけた時と同じように、知己は不思議そうな顔をしていた。
そのときの知己が、あまりにも無防備に見えてつい、自分の気持ちを吐露してしまったのだった。今でも早まってしまった自分の行動を思い出すと、胸が少し苦しくなる。
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