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「……ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったのだけど、気分悪いわよね、すみません」 「いいんです、本当のことですから。それに……感謝しています」 「感謝?」 「はい。もう新人でもないのに、一からやり直しているような自分を好きにさせてくださる」  小橋は多くを語らなかったが、はじめに「頑張れば、それほど長くここにいなくてすむかもしれないぞ」とぶっきらぼうに呟いた。多少事情も知っているだろうに、それについて問いただされたことはなかった。 「それはあなたの人柄よ。ここには一生懸命な油井さんを応援する人しかいないわ」 「そうでしょうか……」 「そうよ! 自信持ちなさい」  営業所内はとてものんびりとした雰囲気だ。良くも悪くも本社の研ぎ澄まされた空気に慣れていた暁人ははじめ、戸惑うことが多かったが、ただゆったりしているだけだったら、早々に嫌気がさしていただろう。ここでは前向きになる力をもらえると感じていた。一日でも早くこの場所でいなくては困るくらいの存在になりたい。  それに今の暁人は、早く本社に戻りたい気持ちもあったが、本社に戻るということはまた姫川と顔を合わせることになる。それは今の暁人にとって本社に戻れないことと同じくらい憂鬱なことでもある。
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