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 暁人は生来引っ込み思案で、目立つことや主張することが苦手だが、誰かのためと思って動くときは、あまり苦手意識が働かない。それは自分の長所だと自負している。  働き次第では小橋の負担を減らすことができる。自分もこの営業所で役に立つことができるかもしれないと思い、暁人は少しだけほっとした。 「油井さん、よろしくお願いします」  表の掃除をしていた田代もすぐにやってきて、外出準備にとりかかった。 「田代くんも自分のスケジュールがあるのに、ごめんね」 「全然、俺油井さんと一緒でうれしいですから、気にしないでください」  異動になった当初から田代とは、年齢の近い後輩ということもあって、良好な関係を築いていた。細かなことまで丁寧に教えてくれるし、仕事に慣れない暁人にとってはわからないところを一番聞きやすい。  だがお客様の評判は上々なのに、事務所にいる田代はぼんやりして美容課の宮川からはいつもぼんくら扱いされている。それを気にするでもない飄々とした雰囲気はつかみどころがなかったが、暁人にはむしろ素直すぎるくらいで、悪い印象はなかった。 「こっちはもう慣れましたか?」  営業車を発進させ、県道とはいいながら随分のどかな二車線に出ると、田代が話しかけてきた。 「うん、おかげさまで。もともと地元ということもあるし……営業の仕事はまだまだだけど」 「そっか、地元ですもんね」 「そうはいっても十年ぶりだから、結構な浦島気分だけどね。田代くんは?」 「俺は隣県でさらに田舎の出身です。大学がこの近くだった関係でそのまま住み着いちゃった感じです」
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