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 異動初日に、一生懸命頑張りますと気負っている暁人に対し、肩の力を抜けと言ってくれたのは小橋だ。思いつめそうなタイプだから、程々にしておけと。 「田代なんか二年目なのに大物みたいな落ち着きぶりだぜ。あそこまでずうずうしくなれとは言わないがな」 「ははっ、確かに彼は落ち着いていますよね」  懇切丁寧に教えてくれるわけではないが、質問をすれば理解するまできちんと説明してくれるし、大切な場面ではさりげなくフォローを入れてくれる。畑違いの仕事に戸惑う暁人は、異動先で邪険にされることも覚悟していたから、本当にありがたかった。  そんな小橋と別行動になると、まだ不安がある。だから後輩であっても慣れている田代が一緒だと心強かった。  本日の一件目は美容室。  着付けも行う、昔ながらの美容室の一画に、メイクアップを中心に商品を置いてくれている店だった。 「あら」 「三井さん、いつもお世話になっております。今日は小橋が不在のため、至らないところもあるかもしれませんが、よろしくお願いします」 「まあまあ、そんなにかしこまらないで。田代さんも久しぶりだわね。若い男性がふたりも来てくださって、いかつい小橋さんよりもさわやかでいいわ」 「ほんと、いい男がそろって」  美容室のお客様も一緒になって笑ってくれて、暁人の緊張も少しほぐれた。田代がオーナーの三井に名刺を渡している。暁人は着付けスペースの手前にある陳列品の掃除とチェックをはじめた。  この店はいつもきれいに掃除をして下さっているようで、ほこりなどもほとんど見当たらず、パッケージが劣化した商品などもなかった。  田代が三井と話をしている間、暁人はいくつか中身の減っているテスターの交換をして、新商品のポスターとフライヤーを用意し、三井に渡した。再び挨拶をして、美容室を出る。
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